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幸い、通帳やら印鑑などの大事な物は燃えておらず、多少の蓄えもある。
退職金も振り込まれる予定なので、暫くは生きていけるだろう。
しかし、高い家賃を払いながらというのは、少々きつい。
職を失った今、少しでも節約したいのが本音だった。
祐介の田舎は、海と山に囲まれた小さな町で、何処へ行くにも車が必要ではあったが、住みやすいいい所だ。
小さな頃から女手一つで育ててくれた母が亡くなってから、もう暫く帰っていない。
母の妹の由季叔母さんがたまに掃除してくれているので、いつ帰っても心配はないのだけれど。
「……こんなものか。」
荷物を一纏めにした祐介は、部屋を見渡し、忘れ物は無いかと確認する。
住み慣れた部屋を出て行くのは少し寂しいが、こうなってしまってはどうしようもない。
祐介は首を軽くふると、荷物片手に部屋を出て行ったのだった。
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