第一章

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善と次郎はわりかし付き合いの長い間柄だった。 といっても一年間に六回以上、しかも毎回最低一週間から二週間はかかる留学をしまくる次郎だったので一緒にいる時間は長くはない。 善は後腐れなくおおざっぱで軽くてだらだらとした次郎を結構気に入っていた。 時折見せる人懐こい笑みとか、 無駄に白くて折れそうな体も 異様に色づきの良い薄い唇とか、 艶やかな黒髪が触り心地いいとか そんな見た目にも魅了されてたのも事実 でもなにより次郎の横は居心地が良かったのである。 なのに気がつくと国境を越えるんだから 善は小さく舌打ちした。 隣の席のクラスメイトがその舌打ちにビクッと肩を震わせた。 相変わらずスピスピいいながら寝息をたてる次郎にチラリと目をやって善は授業に参加しはじめたのであった。
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