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side条山和樹
「次郎すごかった」
思わずつぶやいた言葉はしっかり横にいた優一に拾われてしまったらしい。
優一はグッと眉にシワをよせた。
「なに、和樹ったら桐生くんのこと気になるの?」
俺が他の男の話をすると不機嫌になってしまう、というのは優一に限らずしばしばあることだ。
(チッ桐生次郎、あいつの株上がりやがった。マジ潰す)
優一のそんな考えには全く気付かず、手元のタオルをぎゅっと握った。
ほんとうに俺は愛されていると思う。
それこそ小さい頃から、親に限らず俺を好きだという人は絶えない
怒られたことなんてない
怒られてもそれは相手が間違っているんであって、俺は絶対に間違えない
「俺は、まちがえたのか?」
この二週間、ただただ次郎が間違っていると信じて、謝ったら許してやるのに、と。
優一はそんな珍しく心傷に浸る俺を見て一段と不機嫌そうな顔になる。
「ねぇ和樹、あと10分でバレー班の試合始まっちゃうから、行こ?」
「うん…」
そうだ、こんなことでぐるぐるしてる場合じゃない。
試合しなきゃ
「あの、条山様、少しよろしいですか?」
前を向いたそのとき、大柄ながら態度は控えめな男子生徒が近寄ってきた。
「しん、えいたい…」
「お話があります」
暴行を加える態度ではない、と悟った榊は「じゃあ先に行ってるね」と和樹を置いてコートに進んだ。
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