第一章

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さらっと言い放った善ちゃんの顔を凝視してしまった。 「風…紀?」 「そう、風紀委員」 …… 「嘘だよね嘘だよね!? あんな鬼畜伊賀の犬になったなんて嘘だよね嘘でしょ!!?」 風紀委員、というかその中の一人は俺の宿敵 というか単に怖い無理怖い なんか目の敵にされてるしほんと怖いし、怖いもの 「俺が、なに?」 その時耳元で聞こえたひっくい声にゾワ、と嫌な感覚を覚えて ヒッ と声にならない悲鳴をあげてしまった。 「あ、委員長」 善ちゃんが呟くのを聞いて恐る恐る振り返ると今しがた話題になっていたひと。 つまり俺の宿敵である 伊賀 邦仁、その人が立っていた。 「やぁ、善 あと、じ、ろ、う」 怖いくらいに綺麗な笑顔に俺の脳は働くのをやめた。 「あああこんにちはお久しぶりですご無沙汰しております次郎です」 すんごい勢いで腰を90度に折り曲げながら挨拶をかます。 そんな俺を尻目に食堂にいた人はみんな目を輝かせて興奮した声をあげていた。 「キャァァァア伊賀様ァ!」 「善様善様!!!」 「ツーショット!!!」 ツーショット? ん?俺はアウトオブ視界ですか皆さん 「そうだね、随分ご無沙汰だね次郎くん。 どう?海外でたくさん勉強できたかな?」 柔らかな物腰で喋ってるけど目は笑ってない。 善ちゃんと同じタイプの綺麗系イケメン。腹黒マックス最強委員長様だ。 「はい、勉強になりました」 こわいよこわいよこわいよ 善ちゃん助けて って目で見つめても善ちゃんはちょっと間の抜けたような顔でこっちを見ている。 「おかえり、今度じっくり話ききたいな」 コテン、と首を傾けて無駄にフェロモン垂れ流す委員長様に周りの群衆は地響きのような悲鳴をあげた。 こっちも違う意味で悲鳴あげたいっす 「はい、ぜひ…」 蚊の鳴くような声とはこんなかんじだろうか そんなレベルの小声で返事をすると伊賀はまたにっこり笑って去って行った。
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