第四章

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部屋につき、ご丁寧にベッドまで運んでくれた。 「なんかごめん、ありがとね善ちゃん」 「…しっかり休んで」 なんか怒ってるみたいだなと思うのは俺だけだろうか 「じゃあ俺は戻るね」 そう言って背を向ける善ちゃんのシャツを必死に掴んだ。 「…なに?」 「善ちゃん、寝るまでここにいてくれない?」 なんというか ほんと情けないんだけど 倉庫の暗さを思い出して怖いといいますか、下衆共の顔が浮かび上がって吐き気といいますか、 「なんで?」 「…ゎぃ…」 「え?」 なんでそんなに不機嫌なの善ちゃん…! 「だから、怖いんだって1人になんの」 そう言うと善ちゃんは目を瞠り、くしゃりと顔を歪めた。 「うぉ、」 ものすごい勢いで抱きつかれ、起こしていた体がポスンとベッドに沈んだ。 「次郎、ごめん、ごめん、ごめん、俺なんも出来なかった、ごめん、ごめんね」 耳元で何度も囁かれる悲痛な言葉に、なぜか涙が出てきた。 「善ちゃ…こわかっ、た、…やだった、気持ち、わるかった、」 無意識に涙とともにぽろぽろと溢れる言葉に、善ちゃんは何度もごめんね、と謝った。 善ちゃんはなんも悪くないのに なんかこちらこそごめん、だよ。 なんか善ちゃんがあまりにも脆いから、こっちまで自分の脆さを自覚してしまったというか、 なんていうんだろ 思ったよりショックうけてたのかね俺は。 「次郎、キスしていい?」 嗚咽もおさまり、落ち着いてきた俺の背中をトントンと叩きながら善ちゃんが言う なにを思ってかわからない でも半端じゃなく悲しそうな笑顔をしたりするから、思わずこくんと頷いてしまった。 「…ふっ」 何度も何度も啄ばまれるようなキス。触れては離れ、触れては離れ、遠慮がちなキスに笑ってしまう。 くすぐったいよ、というと善ちゃんはそっか、と笑う
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