第四章

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ーーside七瀬幸久 中庭でいつも通り休憩しようと歩いていると、細っこい黒髪がしゃがみこんだのがわかった。 あのふわふわの黒髪は多分、いや確実に桐生だ、と気づく。 そういえばあいつ3日前に強姦未遂にあったとかなんとか、 大丈夫なのだろうか 駆け寄って声をかけると細い肩がビク、と揺れた。 そういえば桐生と俺が初めて会ったのってここだよな。 というかあれ以来あんまり面識がない。 あの前・会長の神田先輩の桐生の溺愛ぶりには驚いた。 肩を揺らしただけで動かない桐生肩に手をかけた。 とたんまたビク、と揺れる にしても細い 細すぎる 女じゃないんだからもっとがっしりしててもいいものの。 ゆっくり振り向いた桐生は虚ろな目をしていた。 「…んないでください」 「あ?」 「さ、わんないでください」 思わず目を瞠った。 なんでそんなに怯えた顔をしている? まるで触られるのが怖いかのように。 そして拒絶するくせにむりやり俺の手をはがそうとしない。 壊れそうだ、と思った。 そして気が付いたら自分の腕の中に桐生を抱き込んでいた。 「や、だ、やめて」 いやいやと体をよじる桐生をさらにぎゅっと抱きしめる。 「なんもしねぇから、怖くねぇよ。 あんなこと忘れろ」 そういうと桐生は抵抗をやめ、おとなしく俺の体にもたれかかった。 なんもしねぇって、今拘束してんじゃん、 そう言って静かに笑う桐生 壊れそうだ ほんとに、今にも
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