第一章

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本当にシャベルを探し始めようとした善ちゃんを全力でなだめて寮に帰った。 シャワーを浴びてすっきりしてベッドに飛び込むと柔らかい太陽の匂いに包まれた。 うぁ~、きもち~ 思わず感嘆の声をこぼして、何度かふわふわ素材の布団に頬ずりするとそのまま夢の世界に旅立った。 ー ーー ーーーー 「あれ?善、次郎は?」 授業がおわり、それを見計らったように善の教室に入ってきたのは風紀委員長の伊賀だった。 「帰りましたよ」 伊賀も、善も、なかなか普段声を発さない二人が喋っていると聞いて二人の周りには人だかりができてきた。 「なーんだ、せっかく久しぶりに風紀のお手伝いでもさせてあげようかなって思ってたのに」 まるで次郎が風紀大好きみたいな言い方をする委員長に善は小さくため息をついた。 「それが嫌だったんだと思いますけど」 善はこの人、伊賀が苦手だった。 同族嫌悪、とまではいかない。むしろ同族とはちょっとちがうかもしれない。 見た目は共通部分が多い 二人とも綺麗系のイケメンで、なかなか人を寄せ付けないオーラを放っている。 ただ学年が一つ違う、ということで精神年齢は格段に伊賀が上だった。 善の表情は常に無表情冷徹で、ポーカーフェイスだと思われがちだが、本音が丸々表情に出ているからこその無表情なのだ。 それに対し伊賀は冷徹とはいえど口元に愛嬌程度に笑みを浮かべている。目は笑っていないが。彼こそがポーカーフェイスと言えるのである。 王子様みたい 伊賀を初めて見た生徒は必ず口にする。 柔らかな笑みにも見えるその作られた笑顔は人を欺き惹きつけるほどのものを持っていた。 善も同じ風紀に所属して知ったのだ、王子様の仮面をかぶったただの腹黒野郎だと。 まぁそんなこと自分にゃ関係ないと思っていたが… (まさか次郎と関わりがあったとは)
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