第一章

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「善ったら俺のこと嫌いなの?」 善が回想していると伊賀は楽しそうな顔でクスクスわらいながら善のこめかみをツンと押した。 むらがってた生徒の間で歓喜の歓声が湧いた。 「しわ、よってるよ 綺麗な顔が台無し」 (あなたには言われたくない) 善はためいきをついて 「とりあえず次郎は帰りましたよ。いまごろ部屋で寝てますきっと」 そう言って帰ろうとした。 「お礼してほしいなぁ、ぜーん」 背中にかけられた台詞に善は首をかしげた。 はて、この人になにか借りなどあっただろうか、と。 「食堂ね、別れた後生徒会役員たちを足止めしたの、俺なんだけどなぁ」 そういえば今日は珍しく会わなかったなぁあのアホ集団に。 「…それはありがとうございました」 「まぁ俺の可愛い次郎と鉢合わせさせるの、俺自身が嫌だったんだけどね」 …俺のってなんだろう俺のって 「じゃあ俺帰りますね」 今度はなにも言わなかった伊賀に背を向けてその場をあとにした。
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