第一章

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生徒は目を見開く 「え、なんで…」 生徒は横に置いてあったスーツケースをチラリと見て懇願するような顔で理事長を見つめた。 「そんな顔しても駄目。いくら特待生とは言っても、無断で留学して半年も学校来てないだろう。」 「語学留学だし、ちゃんと習得してるのに…!」 「分かってるよ。ただね、君の動機に不純なものが…」 「俺はどちらかというと海外の金髪美人が好きってだけです」 「そう?黒髪も良くない?」 そういう問題ではない 「だってうち、男子校だし全寮制だし、彼女作れないじゃないですか」 と生徒は眉を八の字にする。 「それに向こうのほうがこう、色々積極的だし刺激的だし、男子高校生には超重要な学びがあって…」 思春期を前面に押し出してそれっぽい発言をし始める生徒に理事長はため息をついた。 健全は健全だが、もうちょっとそれを隠してこそ、健全な思春期だと思うんだがね、おじさんとしては。 「とりあえず駄目なものは駄目。だいたい君はもう主要国の言語は網羅してるだろう。 黙って海外なんて行っちゃうからお父さん、泣いてたよ」 「太郎なんてどうでもいい」 「三郎くん、いつもさみしそうだな」 その一言に少年がわかりやすく反応した 「サブが?」 「うんうん」 この生徒がは二個下の弟を溺愛していることは教師間では有名な話で、理事長の耳にも勿論入っていた。 「…一年近く会ってないんだって?」 「…」 「最悪ね、君を退学させることも出来るんだけど、そうしたら三郎くんには最低3年間は絶対に会えないね」 三年も… そう呟く生徒に理事長は、しめた、と笑う。 「こちらとしても君は特待生で貴重な存在だしね。退学は全力で回避したいんだけど」 なお、三年という言葉を繰り返す生徒。 三年間という言葉が響いたらしい。 休みになれば帰省出来るから三年間も会えないなんてありえないのに。そんなこと考えられなかったみたいだ。 「…どうすればいいんですか」 「卒業まで留学は禁止。学校にくること。」 「でも性欲とか…」 「右手とお友達になろうか」 生徒も生徒だが、理事長も理事長だ。 「俺がそんな虚しいことする日がくるなんて…」 「君だったらこの学校にも相手なんてたくさんいるだろう?」 不敵に笑う理事長。 女性はおろか男性だってコロリと落とせそうな微笑みだが少年の顔は晴れない。 「じゃあこの話はおしまい。」
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