第一章

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「…寝かせてよもう…」 だるそうに次郎は答えてゆっくり顔をあげた。 「えっ」 間抜けな声をだしたのはファン達だった。 寝起きの次郎はノーマルの人でも間違いを起こしそうなくらい色気がダダ漏れ、らしい。(柴田善より) 垂れ目とやけに色づいた唇、極めつけに涙ボクロ 教室にいた人たちは固まっていた。 (あれ、桐生ってこんなにきれいだったっけ) 普段は眠気に隠されているその本質がみえてその場にいる人たちの気持ちは一致した。 「あ君たちどっかで見たことあると思ったら、 善ちゃんの親衛隊のひとたちじゃん」 ふぁ、とあくびをしながらなお眠そうな顔で首をかしげた。 「ち、ちょっと綺麗だからって調子乗らないで!!」 「善様にチクる気!?」 なんでこの子達怒ってるんだろうなんて次郎はゆっくり考えていた。 「ちくる?なにを?」 それにいつ自分は調子乗ったっけなぁ、ああ眠い。 「僕たちが君に暴言はいたってちくるんだろ!!?」 ぼうげん… 防眩… いや、暴言か… 善ちゃんに近寄るなんておこがましい~ってやつのこと? 「ん、ちくんないよ 君たち善ちゃんのこと大切なんでしょ」 「当たり前じゃん!!!」 その即答に次郎はゆっくり微笑んだ。 いやぁ、自分の友達が大切にされてるよ。ほっこりほっこり、いいことだなぁ。 「じゃあちくらないよ 善ちゃんを大切にしてくれてありがとうね」 …微妙に話が噛み合ってない気がするのは気のせいだろうか 教室にいた人たちは首をかしげた。 善とどんな関係なの、とファンがいい 友達だ、と次郎がいい おこがましい、とファンが怒り 怒ってる?、と次郎がこぼし なめるな!顔あげろよ!、とファンが怒り 寝かせてよ、あぁ君たち親衛隊の子達じゃん、と次郎がいい ちくるつもり?、とファンがいい ちくらないよ、と次郎がいい ……近寄るなと言いに来たんじゃなかったのか…いつの間にチクるなよという話しにすりかわったんだ…… 周りで様子をみていた人たちは「うーん」と唸った。
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