第一章

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「い、伊賀先輩、こんにち、は」 振り向かずにゆっくり言葉を発すると後ろに感じた気配が真横に移った。 「こんにちは、次郎と善」 ほんと君たち仲良しなんだね、そう言って聞こえた朗らかな笑いに次郎は死人のような表情を浮かべていた。 「まさか君が条山和樹くんに興味を持つなんてね」 「いや、そんな、ちょっと気になってただけなんで」 伊賀はぎこちなく答える次郎のほっぺたに手を伸ばし、 「えい」 ぎゅうううう、とつねった。 「いたぁぁあぁぁあ!」 「ちょ、委員長」 痛みに次郎が絶叫するのと、善が伊賀の手をはたくのは同時だった。 「だって次郎がこっちみようとしないから~」 善にはたかれた手をぷらぷらとしてニコリと伊賀は微笑んだ 「ねぇ、善、 俺の邪魔しちゃう?」 ヒヤリとした笑顔に次郎はゲ、なに怒ってるんだこの人怖ええ、と震えたが 「そうですね、 壊されたら困るんですよ」 同じレベルのヒヤリとした笑顔を浮かべて伊賀と対峙した。 「え?善ちゃん?どうしたの?え?え?」 見慣れない恐ろしいほどイイ笑顔を浮かべた友人に瞠目する次郎。 次郎、否、伊賀と善の様子を食堂にいた人たちは一連の流れをずっと息を潜めて見ていたのだが、 (((うげ、やっぱり同族じゃんかあの二人))) 氷点下まで下がりそうなその場の空気に震えていた。
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