第一章

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「おっと、こんなことしてる場合じゃなかった」 氷点下の空気を先に崩したのは伊賀だった。 いつもの人当たりのよさそうな笑顔を浮かべて 「善、もうすぐであいつらここにくるとおもうよ」 善にはその人当たりのいい笑顔さえ「オラ、はやく次郎連れてけよ」という脅迫の笑顔に見えた。 「そうみたいですね、じゃあお先に失礼しますね」 善も人当たりのよさそうな笑みに切り替えると次郎の腕を掴んでたたせた。 「次郎、行くよ」 「え?」 一人状況を理解していない次郎を引きずるようにして善は食堂を去って行った。 不本意だが認めるしかなさそうだ 善はため息をついた 条山と次郎を徹底して会わせようとしていないのは伊賀なのか あの人なりに守ってるんだろう 不思議そうに素直についてくる次郎を振り返ると 「次郎、委員長に感謝しておきなよ」 次郎は少し首を傾げたのち、 「うん?」 そう疑問符をつけながら頷いた。
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