第一章

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どうも、桐生次郎です、こんにちは。 物心着いたときからあちこち飛び回るのが大好きな俺。 海外大好き。 でもご存知の通り、禁止令出ました。死んでしまいたい。 別れ際にパスポート取り上げられたし、あのひと絶対鬼畜。 理事長室をでると少しだけ気温が高く、湿度も高い。 「あーもう。日本のこの湿度と気温が嫌いなんだってば」 スーツケースをガラガラ引きながら寮どこだっけ?と首を傾げた。 つーか太郎だ、太郎に電話しよう。泣きつこう。 パスポート作ってもらおう。 携帯を取り出し、「たろう」という項目を押した。 ワンコールもしないうちに 『もしもし?まさかと思うけど次郎』 まさかとは思うって、どう考えても俺だと思うんですお父さん。 「太郎、俺海外禁止令出ちゃったんだけど、パスポート手配してくれる?」 海外禁止?知ったことじゃない こっそり行くに決まってるじゃん。 『パパって呼びなさいって言ってるだろう。 それはそうと次郎、そろそろ日本に落ち着きなさい。』 うお、めずらしく父親らしいこと言いはじめた太郎にはぁ?と反抗の声を上げる。 「日本すきじゃないんだもん」 『サブに会えなくてもいいの』 ぐ、と言葉に詰まった俺に気づいたかのようにフフ、と笑いが聞こえた。 サブを使うなんてほんとにいい性格してるよなぁ、太郎も理事長も。 「…サブには会いたいけど…」 よく考えたらサブは中等部じゃんか。中等部に行けるのって滅多にないし、ここにいたってあんま会えないんじゃないか。
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