第八章

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「あーーー、でんわ」 巴が帰ってからおもいだした。 寝すぎてきもちわるい、どうしよう ごろごろしながらそんなことを考えてる場合じゃない。 ケータイに手を伸ばし、着信欄の一番上をタップする。 するとすぐ通信中の画面になった。 でるかな ねたかな プルルルル、と響く音になんだか緊張しながらつめたいケータイを耳に当てた。 『もしもし』 プルルルル、と三回くらいなったところでつながったらしい。 聞きなれていたはずなのに、電話だとすこしちがう。 掠れているのは寝起きだからかもしれない。 「うん、もしもし、善ちゃん」 寝てた?というとうん、と言われた。 時差、何時間だっけ。 でもそっか、寝てたのか わるいことをしてしまった。 『元気?』 あぁ、甘い あまったるい。 ひくくて、耳障りのいい声が、今日は蜂蜜でも注いだんじゃないのってくらい甘く響く 「わりとげんき」 『食べてる?』 「うん」 巴につくってもらった、と言おうとして善ちゃんに告白されていたことをおもいだした。 言わないのもへんかもしれないけど、わざわざいうことじゃないか。 『次郎の声、ききたくなった』 「まだ一週間だよ」 やばい、俺ぜったい今顔赤い。 だってこんな甘えたような善ちゃんの声きいたことないもの。
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