第三章

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「…ろう、じろう、次郎」 心地いい声にうっすら目を開けると焦ったような善ちゃんが目の前にいた。 「…ぜんちゃん」 「やっと起きた。 気持ち良さそうに寝てると思ったら泣いてるから。 どうかした?」 その言葉に頬が濡れてることに気がついた。 なんだっけ すごく悲しい夢をみたんだけど 思い出せない 「…わかんない…ねむい…」 寝てスッキリしたい 善ちゃんはそう、とつぶやいて俺の頬を拭った。 …あれ? なんで善ちゃんがここに? ここ俺の部屋で合ってるよね? だんだんハッキリしてきた頭に、思わず不思議そうな顔をしてしまった。 「なにその顔、もしかして次郎、俺のこと呼び出したの忘れた?」 善ちゃんがニッコリと笑顔を向けてきた。 そう、ニッコリ、と。 「え、あ、うん、いや、覚えてる覚えてる、そうそう、そうだよね」 そうだっけー 俺善ちゃんのこと呼び出したのーマジでー 呆れたようなため息をつかれて 「!」 思い出した。 下から善ちゃんを覗き込むとやっぱりひどい隈だ。 「こんどはなに」 「善ちゃん、寝よー? 最近がんばりすぎなんじゃない?」
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