思いやりの空砲

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    ◇ ◇ ◇  部活の帰り道。空は夜の色を見せはじめていた。夏特有の湿気を含んだ風が、袖から出た腕を撫でて通りすぎていく。  体全体に倦怠感。途中から参加したとはいえ、やっぱり疲れる。  ささやまー、とやけに間延びした声で玉木が俺の名前を呼んだ。 「そういや、何で今日遅れてきたんだよ?」 「委員会だよ。保健委員会の集まり」 「あー、そういやお前最初のクラス役員決めのじゃんけんで負けてたなー」  でも保健委員なら保健室の女の先生とヤれるんじゃね、と山田が玉木に続いて言う。  発想がアホらしくて、俺と玉木は声を上げて笑った。  部活が終わって、玉木と山田と一緒に校門まで歩くこの時間は嫌いじゃない。  ちょうど自転車置き場の右横を通りすぎたところで、ふと中原のことが頭に浮かんだ。アイツの傷付いた表情が。  左手側にある雨よけ用の屋根に取り付けられた蛍光灯のように、チカチカと。浮かんでは消える。 「なあ、玉木」 「なんだよ?」  玉木は整った顔をこちらへ向けた。 「お前、コクられたとき何て断るの?」  山田と玉木は顔を見合わせたかと思うと、急に吹き出した。 「なに、お前告白されたの?」 「相手はどんな子? 名前は、名前?」  玉木と山田が矢継ぎ早に質問してくる。  言わねーよ、と山田の頭をはたく。  
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