思いやりの空砲

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    ◇ ◇ ◇  電灯から垂れている紐を3回引っ張り、部屋は真っ暗になった。ベットの上に寝転がって、ぼんやりと天井を眺める。  つい三日ほど前のことだった。  姉ちゃんの恋は終わった。  原因は相手の浮気。そして、相手と別れてから姉ちゃんはよく部屋に籠るようになった。  人を部屋に閉じ込めてしまうくらい、失恋のナイフは人を傷つける。多分、相手を好きでいたほど。想えば想うほど、その痛みは鋭くなるんだってことを、姉ちゃんの件で知った。  なのに、俺は今日。中原に。  記憶の海の底に無理矢理押し込めていたアイツの傷付いた表情が浮かび上がってくる。姉ちゃんの泣き顔と一緒に。  俺のバカ野郎が。明日、謝ろう。  
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