始まり

10/10
前へ
/13ページ
次へ
「大丈夫ですよ、僕は既に寿命を終えていますから。」 え? 「私はもう百五十年生きた魔女よ。家族なんて百年前からいないわ。」 なんと? これは気を使わせたのか? 僕は兎も角、私の方は何となくそんな感じはしないな。 先程から感じるのは、逆のイメージ。 火と水みたいなものだろうか? そんな事を思っていると。 ━━━では、申し訳ないのですが、始めますよ?━━━ ついに、時が来た。 「後はお任せしますね。」 「あら、私じゃないのね。」 そんな声を最後に、二人の体が光になっていく。 「なっ!」 その光は、まるで還るかの様に俺の中に入り込む。 それは光の奔流。 ━━━貴方は器を。彼は聖を。彼女は魔を。貴方は中立と公平を。彼は秩序と法を。彼女は混沌と自由を。━━━ 「これは………」 満ちる、満ちる。 何か欠けたものが埋まっていく。 足りなかったものが溢れてくる。 やがて、二人の光が完全に俺の中に入り込み、辺りに神の気配しかしなくなった時。 ━━━では、神代よりの使命です。灯し、照らし、導きなさい。貴方を縛る枷はもうありません。幸運を。━━━ 気付けば俺は最初からあった光の中に、まるで吸い寄せられる様にして意識を失っていった。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!

9人が本棚に入れています
本棚に追加