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妙に納得のいかない展開になり始めた時、俺の思考を乱すかの様に神の気配が増した。
━━━成る程、そういう事ですか。得心がいきました。本来なら不要な筈の私が呼ばれた訳が。━━━
その瞬間、俺の頭の中で何かが弾けた。
いや、弾けたと言うよりは何かが俺を、俺の頭の中から俺の意識を食い破るかの様な。
突然の痛みに、俺は声すら出せずにその場に蹲る。
満月、民衆、微笑む女性、十字架、沢山の篝火、泣き叫ぶ赤子の声、暗闇に光る二つの瞳、そして赤い血。
それと同時に何かが俺を塗り潰そうとする意識を感じた。
「があぁっ!!」
俺は無意識に吼えていた。
自己を主張する様に、他者を威圧する様に、全ての枷を凪ぎ払う様に。
━━━面白い。まさか、こうなるとは。━━━
次々に頭の中に押し寄せてくる、誰のとも分からぬ記憶の断片の波が途絶えた時、神が呟いた。
何となくだが、分かった。
いや、分かってしまったと言うのが正しいか。
一般的な常識人を公言していた俺が、過去、どれだけファンタジーな存在だったのかを。
どうやら俺は元の世界には戻れない運命らしい。
とは言え、俺は元の地球で死んだ訳ではなく、所謂神隠し的な状態で、更に言えばこの場に来たことにより死んだ扱いになっているだけの様だが。
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