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「おいおい、良太。女の子を泣かせるとはとても一善家の男とは思えんぞ」
至極当然な判断をしたと思ったんだが、この会話の流れで俺が怒られるのか。
親父は奏を見るといつも困っている人に話しかけるトーンで話しかける。
「まぁ、君も君だよ。突然そんなことを言ったってウチも困るし、君にも帰る家があるんだろ?」
「……」
帰る家というフレーズに奏がぴくっと反応したように見えたが、そのことを説明するように奏が口を開く。
「私には家がないんです……」
「おやおや」
「な!?」
いや、それはウソだろ!?
それじゃあ今までこいつはどうやって生きていたんだ!
…………ま、まぁ、最初に奏を見たのは確かにテントだったんだけど。
「親もいない私は住む場所が必要で……」
「しかしなぁ」
もし本当なら大変だが、いまいち信じがたいのか親父も渋る。
どうやって断るもんかと親父が頭をポリポリ掻く。
親父も言葉に迷ってるみたいだし俺が問答無用に断るか。
「奏、あのな――」
「お願いします! 私を助けると思って!!」
「「よし、任せとけ!!!」」
「「って、つい答えちまった!!」」
恐るべきは一善家の血。
親父と一言一句どころかモーションまで同じだった。
「本当ですか!?」
ああ、もう奏の瞳がキラキラしだしちゃったよ……
こうなれば断るのは一善家として、男として廃るってもんだ。
親父もやっぱり同じ考えだったようで。
「……よし、わかった。廊下の突き当たりの部屋が空いているから今日からそこを使いなさい」
「はい!」
そして奏は今まで以上の笑顔で俺を見つめた。
「良太さん、これからは私が一生お世話しますね!」
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