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「うへ~わからん」
「普段ちゃんと勉強をしないからだよ」
翌日、2-Aで数学の勉強に苦しむ晋平を叱りながらもいつもの日常にほっと胸を撫で下ろす俺がいた。
昨晩はあの後事情を全て救急隊の人たちに話し、後の処理はプロに任せて俺はすごすごと引き返した。
まぁ、俺にとっては確かに赤の他人だし。あれくらいがちょうど良い引き際だったと思うが……
あの少女が心のどこかに引っかかっているのは確かだ。
大丈夫、あの時ちゃんと生きていたじゃないかあそこからどうにかなるなんて――
「おーい! 良太~早く教えてくれよ~このままじゃ俺、数学の高橋に叱られちまうよ~」
「あっ、悪い悪い」
俺がいつもの日常に戻ろうとした、その時だった。
「失礼します」
開かれる教室のドア、そこにいるのは――
あ、あいつ……!!
夜で顔が見えなかったのに直ぐに分かった。
そいつは無言でこちらに近づく。
そして俺の目の前で立ち止まった。
「一善 良太さん」
「は、はい!?」
あれ? なんで俺の名前を……
質問を投げかける前に先に向こうが口を開く。
「昨夜の1件、本当にお世話になりました」
「は、はぁ……」
俺の好きな笑顔を見れたが今は困惑が大きい。
「私はあそこでこの世を去るつもりでした。しかし、あなたに救われ今こうして生きている」
「ですので、これからの人生は良太さんの為に使わせてもらえないですか?」
「……ん? いや、あの、それってどういう――」
事態が1mmも飲み込めない俺、しかし彼女はまたニコリと笑い宣言した。
「つまり、
私はこれから一生あなたについていきます!」
「は? …………えええぇぇぇぇぇえええぇえぇぇ!!??」
こうして俺と都成 奏の奇妙な関係が始まった。
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