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「お、おいっ、ゆかり! 大丈夫かよ!?」
身体の力がすべて抜けてしまったかのような脱力感。
無理もない。まるでこれは、ファンタジーの世界だ。
それが今、現実に、目の前に起こっているのだから。目を疑うとは、まさにこのことだろう。
「で」
と。
涼子先輩は、生徒会室にあるポットからコップ四つにお茶を注ぎ、それをテーブルに並べて言った。
幼女美月は、俺の膝上からピョンと飛び降り、両手でコップを持ちゴクゴクとお茶を飲み干す。
行動もすべて、やはり子供だ。
「こんな摩訶不思議な現象の原因は一体なんなのかしら?」
先輩がそう話した瞬間だった。
「それについては、この袴田弥宵が話してやろう!」
突然、ホウキ用具入れが開くと、そこから今回の原因を作った張本人が登場した。
いやいや、ビックリするじゃねーか! というかアンタいつからそこに隠れてたんだよ!
「弥宵……やはり貴女だったのね」
涼子先輩は、呆れたようにため息をひとつ溢すと片手で額を押さえた。
流石の先輩も袴田先輩には、いろいろと手を焼いているらしい。
「おや? ひとり、明後日の方向を見ている者がいるが」
「あー、ゆかりは大丈夫です。ちょっとショックが大きかっただけなので」
固まるゆかりはちょっと置いておいて、俺たちは話を進める。
「さっき桐生蒼介が告げたように、そこにいる金髪碧眼の幼女は、あの柚木園美月本人で間違いない」
「みたいね。それで、今回はどんな実験をしたのかしら?」
「流石は涼子、察しがいい。うむ、柚木園美月が幼女化してしまったのは、大人化できるガスを誤って幼児化してしまうガスを吹きかけてしまったからなのだよ。はっはっはっ」
「いやそこ、笑い事じゃないですからね!?」
一方、幼女美月は、生徒会室にある和菓子を勝手に開けて食べている。
お菓子を食うのはいいけど、ちょっとはじっとしていて欲しい。
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