第1.5章 幼女美月

14/19
前へ
/49ページ
次へ
「あらあら、さっきからオバサンって一体誰のことかしらね。このお口かなぁ、悪いお口は」 バタバタバタと、幼女美月はちょっと涙目で手足をばたつかせる。 先輩の目に光が点っていない。 まるで悪の手先として操られているみたいな感でだ。 「というか鬼って、鬼ごっこかしらー? だったらお!姉!さんの勝ちねー。さぁてここで質問です。捕らえられた哀れな子羊さんはこの後どうなってしまうのでしょーか」 「(バタバタバタバタ)」 「はい、時間切れ。正解はぁ──お尻100叩きの刑でーす。うふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」 笑ってるけど全然笑ってねー! そして幼女美月は、本当の鬼をみたような目で泣きべそだ! 流石にこれ以上は幼女美月が可哀想なので、先輩を説得することにした。 「す、涼子先輩……もうそれくらいにしてあげてください」 俺の声に振り向く先輩。 その瞳には、うっすらと涙が浮かび上がっていた。 「私だって……ちょっとは傷つくのよ」 先輩はそう言うと、観念したように幼女美月を床へと降ろす。 青白い顔でガクガクと身震いさせる幼女美月。 相当怖かったのだろう。まぁ少しお灸を据える意味では良かったのかな。 それよりも泣き顔の先輩は、かなりの破壊力があった。 大抵の男ならば、あの顔をするだけで落とせてしまえるかもしれない。 実際、俺も心を奪われそうだったからな。 「涼子先輩。先輩はオバサンじゃないですから気にしないでください。先輩は可愛らしいですよ」 「ん……ありがとう、蒼介君」 先輩は少し安心したように笑った。 ともあれ。 先輩のお陰でお転婆娘を捕らえることに成功したわけだが。 「ところで、この子は一体誰なのかしら?」 「あっ、はい。それについては、生徒会室で説明しようと思います」 しっかり逃がさないように幼女美月の手を繋ぎ、俺と先輩とゆかりは生徒会室へと向かった。
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加