第1.5章 幼女美月

17/19
前へ
/49ページ
次へ
「おかしおいひぃーっ! ねぇねぇ、ドウテイも食べる?」 幼女美月は話の腰を折るように、俺の膝上に座って顔を見上げた。 「……頼むから童貞って言うのはやめてくれ」 「どうして?」 「いや、なんか……傷付くから」 「ふーん」 どうでもいいように、美月はお菓子を次々に口元へと運ぶ。 無知な子供ほど恐ろしい存在はない。涼子先輩の件が良い例だ。 「子供に心を折られてどうするのだ、桐生蒼介よ。やはり貴様もまだまだ青いようだな、名前だけに」 「上手いこと言ってるとこ悪いですけど……この後どうするつもりですか?」 「どうするとは、どういう意味だ?」 「いやいや、美月をこのままにしておくわけにもいかないでしょ!?」 「ふむ。別に構わないではないか」 「いや、構うわっ!」 この袴田という人は、本当にやばい。確実に頭のネジが数本ぶっ飛んでいるに違いないな。 「戻せるの?」 と、涼子先輩が首を傾げて聞いた。 「そうだなぁ」 生返事な袴田先輩。 まさか元には戻せないとか言うんじゃねーだろうな! だとしたら冗談じゃない。これならまだ大人美月の方がいくらか扱い易いってものだ。 「戻せないの?」 再び、涼子先輩が聞いた。 すると袴田先輩は、腕組みをしながら静かにゆっくりと天井を見つめて、 「戻せない……わけではない。だが」 「だが?」と涼子先輩。 呼応するように、意識を失っていたゆかりが目を覚ます。 「幼女化に対しては────まだ戻す方法を確立できていないのだよ」 ……はい? ちょっと待て。つまりそれって、元に戻せないって言ってるのと同じじゃねーかよ!
/49ページ

最初のコメントを投稿しよう!

188人が本棚に入れています
本棚に追加