第5話 追憶のプール 2

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「思い出そうとするのは、やめなさい」 花房医師は、竹山をまっすぐに見て言った。 「生きていくのに、必要がないなら」 言葉が、とても重く耳に響いた。 竹山は、膝にある両手を強く握る。 記憶がないまま、十年間。 約束を守り、生きてきた。 「…ないです。…俺には」 そう言い、竹山はふっと思った。 …どうやって生きてきた。 ……十年前、傷をつけられた梅林寺は…。
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