213人が本棚に入れています
本棚に追加
/29ページ
「思い出そうとするのは、やめなさい」
花房医師は、竹山をまっすぐに見て言った。
「生きていくのに、必要がないなら」
言葉が、とても重く耳に響いた。
竹山は、膝にある両手を強く握る。
記憶がないまま、十年間。
約束を守り、生きてきた。
「…ないです。…俺には」
そう言い、竹山はふっと思った。
…どうやって生きてきた。
……十年前、傷をつけられた梅林寺は…。
最初のコメントを投稿しよう!