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「花音落ち着いて。ゆっくり探してごらん?」
バッグからこぼれて散乱したポーチや手帳を瞳は拾い、私に手渡しながら優しく声をかけてくれた。
でも、全部ちゃんと探したのにやっぱり…
「…ない。どうしよう! 中に入れない!」
ここまで来たのに、入る直前で気付くなんて…。私、なにやってるんだろっ!!
今から取りに戻っていたんじゃ間に合わない。
取り返しのつかない自分の失敗に血の気がさあッと引いていく。
目の前が真っ暗闇だ!
電車をたくさん乗り継いで、瞳にはるばるここまでついて来てもらったのに…
イブの夜に寒い思いをさせただけ!?
もし私がサンタなら、トナカイにチケットを忘れてきたうっかり者を、後ろ足で蹴り倒すよう指示するぐらいの失態…!
私は半べそかきながら、翔と瞳を交互にみた。
あーもう…。
自分のうっかり具合にへこむ…!!
「…俺がなんとかする。おいで二人とも」
「!」
翔は落ち込んでいる私の背中をぽんっと優しく叩いた。
そのまま人を掻き分け、一人で建物の入り口へと行ってしまう。
…え? なんとかする…って、
どうやって?
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