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奥に進むと少し広いロビーがあって、壁には今後の上演を知らせるチラシがいくつも貼ってあった。
そこには翔たちのバンドの出番を待っているのか、たくさんの人たちがたむろしていた。
煙草を吸って談笑している数人のグループ。
髪を金色に染め、耳にはたくさんのピアスと腕にはタトゥをした人。
個性的なファッションに身を包んだお洒落な人。
みんな私たちより歳上に見えた。お子さまはきっと私たちぐらい…。
「…花音、室内入ったのにまだマフラーしてる」
「わっ!!」
急にマフラーが後ろの方へ引っ張られ、首が締まって苦しくなった。
「そんなに俺のマフラー、気に入ってるの?」
「翔ッ! やめてよ! 引っ張ったら苦しいじゃん、もう!
今から外すところだったの!」
私は振り返って、翔をきっとにらみながらマフラーを外す。
何がおかしかったのか、目が合うと翔は笑った。
「…あ、その花音がしているマフラー、見覚えがあると思ったら…翔君のだったんだ?」
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