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「え? 花音待って!」 ライブハウスに向かって歩いている少し派手なファッションに身を包んだ人たちを、私たちはどんどん追い越していく。 寒さも忘れて、胸がわくわくし始めていた。 「花音! 落ち着いて。翔君たちの番までにはまだ時間あるから…」 瞳はブレーキをかけるように立ち止まり、私の手を引っ張った。反動で転びそうになった。 「ご、ごめん…つい興奮して…」 態勢を立て直しながら謝って、そのあと瞳を見た。 彼女の黒いストレートヘアは乱れ、頬はほんのり赤くなっている。 二人で息を整え、歩道より少し敷地に入った場所からライブハウスを眺めた。 「花音、私こんな大きいライブハウスだと思ってなかった。すごい…」 「…ほんとだね。まさか翔がこんな場所でライブをするなんて…」 「翔君最近ホント急にかっこよくなったよね。音楽とかやってるからかな?」 瞳の綺麗な唇から白い息がこぼれる。 「えー? …わかんない! てか、立ち止まると寒いっ。とりあえず中に入りたいけど、えっと…もう入ってもいいのかな?」
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