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「……あ、あれ? ……動かない」
白いドアはびくともしなかった。
「ひ、響さ…響ー? 開けて下さ…あ、開けてー!」
響に対してまだ無意識に敬語が出てしまう。
慣れないタメ口でドアの向こうにいるはずの、響に向かって呼びかけた。
だけど、返事はなく私の声はドアの壁にあたり、はじき返される。
「……あり?」
私の耳へ微かに音が届く。目を閉じ、よーく耳を澄ました。
さっきまで考えごとや、鼓動に気をとられて聴こえなかったけど、ドアの向こうからズンズンと漏れて聴こえてくる音に、私はやっと気が付いた。
中で音楽が鳴ってる! はうっ! …早く入りたい…!
私は息をお腹いっぱい吸って、もう一度開かずの扉に大きな声で呼びかけた。
「…あーけぇーてーっ!! ……ねえ、響、開け…ぎゃあ!?」
鳴っていた音が止むと同時にドアが突如、内側から勢いよく開いた。
「……ッえ?!」
けれど、そこに立っていたのは響ではなかった。代わりに目に飛び込んできたものは…
「ひ、ひいぃッ! ええッ!? な、なんで……髭ぇ…!」
私のもっとも苦手とするジャンル、あごひげワイルド系男子だった。
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