第1章

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「ではこちらの要望を言いましょう。人質……そうですね、後一人は欲しいところか…… 誰か立候補があれば助かります。人質は高遠さんである必要はないので勇気ある大人の方の立候補があれば嬉しいですね。むろん捜査官は除外ですよ」 「わざわざ人質になる奴がいるもんかよ!」と片山が叫ぶ。 「立候補者がいない場合は、捜査官が後一人を決めて下さい。武器は……貴方たちに許された武器は拳銃2丁、SMG2丁……それが本来ですが貴方たち自身の努力も認めます。ですが」と村田はテーブルの上に置かれた銃器を見つめた。 「自動小銃は頂きましょうか。もっとお持ちのはずですが隠しましたね、さすがの対応です。じゃあこれを最初の取引材料にしますか。自動小銃5丁、SMGを5丁……それで人質交換ということで。あ、捜査官の銃は入れちゃダメです。それは貴方が実力で僕から奪い取ったモノですからその所有権は認めます」  拓は一瞬だけ目線をテーブルに向けた。  自動小銃は2丁、SMGは3丁、あとは拳銃が3丁しかない。今すぐには村田の言う条件を達成することはできない。  確かに銃器を隠している。だが……困ったことに隠したのはサクラで拓はその場所を知らないのだ。 「では捜査官、人質の選択をして下さい」 「断る」 拓ははっきり言った。  今拓と村田の立場は涼がいることでイーブンになっているだけだ。そんな無理難題を請ける必要はないのだ。確かに村田は涼の命を握っているが拓も村田の命を握っている。 「困ったなぁ…… じゃあ」 「動くな!」  拓が銃で村田の動きを制する。その時だった。銃声が鳴り、拓の傍の椅子が撃ち砕かれた。 「動かないで下さい」  男は隠し持っていた拳銃の銃口を拓に向けた。 「これで形勢逆転です、捜査官」  男……篠原は拳銃を拓に向け、皆の中から歩き出てくる。この時全員が自分たちの中に紛れ込んでいたスパイの正体を知った。拓は、銃は村田に向けたまま篠原を睨む。篠原は無言のまま拓の後ろに移動した。 「やはり驚きませんね、捜査官」 篠原もいつもと全く変らない口調だ。  少し前、拓は「スパイの件は解決した」と言った。そのことを篠原が隠し持っていた無線で知った村田は篠原を潜入させていることの限界を判断し行動に移したのだった。拓もその事を予想し対策をとろうと思った矢先だったのだ。  だが予想外のことがさらに起こった。
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