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篠原が足を止めた瞬間、片山が篠原に飛び掛ったのだ。むろん独断だ。だがこの中では片山はこういう修羅場には慣れている。すぐに篠原は銃口を片山に向けたが片山はすかさず篠原の拳銃を叩き落した。
「ガリレオ坊やに負けるかよっ!」
片山の拳が篠原の顔に炸裂する。村田は動けない、拓の銃口は全くブレずつきつけられたままだ。
片山は銃を置いたテーブルに篠原を叩きつけ銃が床に散らばった。意を解さず片山はそのまま篠原を組み伏せた。落ちた銃は三浦と岩崎、田村の三人がSMGを拾い、拾い切れない自動小銃は誰もいない場所に蹴る。
形勢は逆転した……誰もがそう思った。
「なっ……」
さすがの拓も小さく驚く。
三浦の銃口は片山に突き付けられたのだ。
「どういう事だ! 三浦ぁ!」
片山は完全に度を失い叫んだ。三浦は今にも泣きそうな顔で、それでも銃口を強く片山を突く。その銃は震え、力の加減を間違え軽く殴ったような形になった。
「あはははははっ♪」愉快そうに笑う村田。
「黙れ!」拓は一喝し銃口を村田に向けたまま体を三浦の方に向け睨む。
拓に睨まれた三浦は完全に怯えきるがそれでも銃口を片山から外さない。一方篠原は片山に強打された額を拭いながら落ちた拳銃を取った。篠原は冷静そのものだ。
「三浦さん、勧誘されたか、篠原に」
三浦はあからさまに動揺した。それが言葉で聞く必要のない返事だった。想定外だった。あれほど残酷かつ非道なゲーム側に寝返る人間が出るとは思っていなかった。生存のためではない、そもそも信用に足る相手ではないからだ。その事を説得しようと思ったがこの状況下ではとても無理だ。説得をすればどうしても拓も感情的になる。今この状況をキープするには拓は機械の如く心を持たない冷徹な面があることを村田たちに認識させなければならない。
「捜査官。私も貴方と敵対するのは淋しいですが」
篠原は一笑するとゆっくりとサタンの方に歩き出した。
その動きを拓は見逃さなかった。
その刹那、フリーだった左手が背中に伸び、ズボンに押し込んでいたグロック17を取ると、瞬きするより早く抜き、そして篠原に向け、引き金を引いた。
誰も、正確に拓の抜き撃ちを理解した者はいなかった。
篠原が歩き出した次の瞬間にはもう拓はグロックを撃ち終え、篠原は恐らく何が起こったか理解する前に額の真ん中を撃ちぬかれその場に倒れた。
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