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第1章
これは多分、夢の話。
夜風がまだ冷たい初春の日。
日付が変わったその直後に、街中で見つけた一つの終わり。
夜の中に、取り残された独りの少女。
警鐘を鳴らす遮断機の中に、一人の少女。
電車が照らすライトの中に、ヒトリの少女。
この世界の外側へ、旅立とうとする儚い少女。
遮断機外の『コッチ側』から見る少女の横顔。
死に直面にしているにも関わらず、なぜか嬉しそうで。
「やっとこれで終わる」と、満足感に満ちたそんな表情だった。
そこまでならば俺の体はあの時、絶対に動いていない。
自分の命を賭してまで少女を助けようとしなかったはずだ。そんなこと誰がするものか。
しかし見てしまったのだから仕方がない。
満面の笑みで人生を終えようとする彼女の頬に、
一筋の寂寥の雫が伝っていたのを。
プロローグ
[四月 七日 日曜日
今日は夜の公園で男の子と出会う。あの日、私を助けてくれたあの人。私独りのこの世界から虚無感を取っ払って、安心感を与えてくれる運命の人。
そんな人と今日、私は出会う。]
四月七日。一駅離れたところにある、今日から開店の書店に文庫を買いに行った帰路の道すがら。長く入り浸った結果、すっかり空は真っ暗だ。
俺は明日から通う予定の高校前をたまたま通りがかった。意識して向かったわけではなく家までの最短距離を歩いていたら自然とそうなったのだ。別に特別な感情も湧き上がることなく、平静に通り過ぎた。
その時、目に入ったのが学校の筋向いにあった小さな公園。電柱の光が二つ並んだベンチの孤独を嘆くようにライトアップしていた。本の続きが気になったので俺は向かって右側のベンチに腰掛け、また活字を黙読することにしたのだ。
ちなみにジャンルはバトルを交えた青春モノだ。
立ち読みという半犯罪行為で三分の二くらいまでは読み終えていた。だから開いたのはちょうど主人公がヒロインを助けにきた場面。ここが一番の山場で見所、クライマックスだ。
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