第1章

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授業終了のベルがなる。 年老いた教授が「また来週」と言うよりも早く、すでに帰る準備をしていたらしい後ろの連中が、がやがや騒ぎながら出口へ向かって行った。 教授は、何か言いたげな様子で口をもごもごさせていたが、諦めたのだろう、そそくさと荷物をまとめ始めた。 今日は妙に疲れた。身体の緊張をほぐすために、ぐっと伸びをする。家に帰って復習してアイス食べて寝よう。 一人思案しながらカバンにレジュメを突っ込み、帰ろうとすると 「おい待てナチュラルに帰んなよ??」 高圧的で、無駄に元気な声が横から飛んできた。くると思った。ため息をつきながら友人を見る。 「ごめん、バイト」 「嘘つけ、今日は水曜日じゃねえか。お願いだから、さっきの内容教えてくれよ。本当に全然わからなかったんだよ!」 そうだろうさ。講義中「いや待てよ」「どういうことだ」なんて無益なことをぶつぶつ呟きながらレジュメを眺め、目を白黒させていたのが見えていたからな。 「お願いだよ、これじゃ単位落としちまう、なんでも奢るからさ!」 半分、涙目になりながら、上目遣いで必死で懇願してくる。 困ったものだ。 これが可愛い女子なら良いのだが、目の前にいる奴は体格の良いがっしりした男である。気持ち悪いことこの上ない。しかも奴の声が大きいせいで、先ほどから、女子達がちらちらと非難がましくこちらを見てくる。おい、見世物じゃないぞ。まるで僕が悪者みたいじゃないか。心の中で、また大きな溜息をつく。 「あーもう、わかったよ。食堂のカレー、大盛り」 「さーっすが!大盛りだな!」 先ほどの悲壮感は顔から消え失せ、えらく手早く荷物をまとめ、リュックを担ぎ、さあ行こうぜと笑顔で僕を見る。 調子のいい奴だ。 しょうがない、ちゃっちゃとすませよう。 人でごった返している出口へ、二人で向かった。
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