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授業終了のベルがなる。
年老いた教授が「また来週」と言うよりも早く、すでに帰る準備をしていたらしい後ろの連中が、がやがや騒ぎながら出口へ向かって行った。
教授は、何か言いたげな様子で口をもごもごさせていたが、諦めたのだろう、そそくさと荷物をまとめ始めた。
今日は妙に疲れた。身体の緊張をほぐすために、ぐっと伸びをする。家に帰って復習してアイス食べて寝よう。
一人思案しながらカバンにレジュメを突っ込み、帰ろうとすると
「おい待てナチュラルに帰んなよ??」
高圧的で、無駄に元気な声が横から飛んできた。くると思った。ため息をつきながら友人を見る。
「ごめん、バイト」
「嘘つけ、今日は水曜日じゃねえか。お願いだから、さっきの内容教えてくれよ。本当に全然わからなかったんだよ!」
そうだろうさ。講義中「いや待てよ」「どういうことだ」なんて無益なことをぶつぶつ呟きながらレジュメを眺め、目を白黒させていたのが見えていたからな。
「お願いだよ、これじゃ単位落としちまう、なんでも奢るからさ!」
半分、涙目になりながら、上目遣いで必死で懇願してくる。
困ったものだ。
これが可愛い女子なら良いのだが、目の前にいる奴は体格の良いがっしりした男である。気持ち悪いことこの上ない。しかも奴の声が大きいせいで、先ほどから、女子達がちらちらと非難がましくこちらを見てくる。おい、見世物じゃないぞ。まるで僕が悪者みたいじゃないか。心の中で、また大きな溜息をつく。
「あーもう、わかったよ。食堂のカレー、大盛り」
「さーっすが!大盛りだな!」
先ほどの悲壮感は顔から消え失せ、えらく手早く荷物をまとめ、リュックを担ぎ、さあ行こうぜと笑顔で僕を見る。
調子のいい奴だ。
しょうがない、ちゃっちゃとすませよう。
人でごった返している出口へ、二人で向かった。
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