3

2/31
125人が本棚に入れています
本棚に追加
/31ページ
****************** 「早く帰って来てね?」 見るからにしょげた様子のノンは、 出勤する智樹を玄関まで見送りに来た。 また、垂れ下がる耳と尻尾が見える。 そんな幻想にも週末で慣れ、 受け入れてしまった自分がいた。 「ノンの夕飯があるからな。  なるべく早く帰るよ」 自分の口から、 そんな台詞が出てきたことが信じ難い。 元妻に、いや、過去の女たちに、 そんな言葉をかけてやったことが、 未だかつてあるだろうか。 「うん。待ってるね」 「昼飯は焼きそばがあるからな。  コンロが怖かったら、レンチンしろ」 「うん」 俯く頭を撫でてやるとすぐに笑うから。 そっと抱き寄せ、額にキスを落とした。
/31ページ

最初のコメントを投稿しよう!