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「早く帰って来てね?」
見るからにしょげた様子のノンは、
出勤する智樹を玄関まで見送りに来た。
また、垂れ下がる耳と尻尾が見える。
そんな幻想にも週末で慣れ、
受け入れてしまった自分がいた。
「ノンの夕飯があるからな。
なるべく早く帰るよ」
自分の口から、
そんな台詞が出てきたことが信じ難い。
元妻に、いや、過去の女たちに、
そんな言葉をかけてやったことが、
未だかつてあるだろうか。
「うん。待ってるね」
「昼飯は焼きそばがあるからな。
コンロが怖かったら、レンチンしろ」
「うん」
俯く頭を撫でてやるとすぐに笑うから。
そっと抱き寄せ、額にキスを落とした。
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