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――あぁ、それが問題なのか。 「嫌いになんて、なるわけない」 濡れて冷えた頬を包んで温めながら、 智樹は目を合わせて微笑んだ。 なんて――愛しい存在なんだろう。 「傘持ってきてくれて、嬉しいよ。  でも、  今度は先に連絡してくれ、な?」 「……うん……。ごめん、なさい……」 「怒ってないから、謝るなよ。  ……つーか、お前、濡れすぎだ。  自分の傘は差してたんだろうな」 ジャケットを着ている日で良かった。 上着を脱いで、ノンに羽織らせる。 「どうぞ」 ポケットのハンカチを取り出すと、 横からタオルが差し出された。 「……ありがとう、ございます」 どうやら、後ろの夫婦は、 一部始終を見ていたらしい。
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