99人が本棚に入れています
本棚に追加
――あぁ、それが問題なのか。
「嫌いになんて、なるわけない」
濡れて冷えた頬を包んで温めながら、
智樹は目を合わせて微笑んだ。
なんて――愛しい存在なんだろう。
「傘持ってきてくれて、嬉しいよ。
でも、
今度は先に連絡してくれ、な?」
「……うん……。ごめん、なさい……」
「怒ってないから、謝るなよ。
……つーか、お前、濡れすぎだ。
自分の傘は差してたんだろうな」
ジャケットを着ている日で良かった。
上着を脱いで、ノンに羽織らせる。
「どうぞ」
ポケットのハンカチを取り出すと、
横からタオルが差し出された。
「……ありがとう、ございます」
どうやら、後ろの夫婦は、
一部始終を見ていたらしい。
最初のコメントを投稿しよう!