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「今日は上がれるのか?」 「セットアップの途中ですが、  あとは問題ありません。  定時に上がるつもりだったので」 「僕は仕事に戻る。  君も荷物を取って来い」 「……よろしいんですか?」 あと1時間とはいえ、まだ勤務時間だ。 専務の粋な計らいに、 智樹は思わず目を見開いた。 「あぁ、構わない。  ……鞠弥。それまで居られるか」 「はい。大丈夫です。  でも、移動しましょうか?  ここは使わないと思いますけど」 「そうだな。ロビーでお茶を」 頷いた専務夫人が寄ってきたので、 ノンの背中を軽く叩いて体を離した。 「悪い、ノン。荷物取ってくるから。  もう少し、待っててくれ」 専務の気遣いを、 ありがたく受けることにして、 涙の止まったノンを、夫人に預けた。
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