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「入社当時から君を知っているから。  小坂の話を信じきれていなかった。  でも、納得した。君の表情を見て」 少ない付き合いでも、 見てすぐ納得してしまうような。 そんな顔を自分はしていたのだろうか。 「随分、年が気になるんだな」 表情は変わらないが、 やや意外そうな声がする。 「気になりますよ、当然です」 専務夫妻のように、 片手で収まる話ではない。 「それは、当然、なのか?  僕が初めて『愛し合ってる夫婦』だと感じた人たちは、10歳差だったよ。  友人の両親だが、成り上がりの天才と財閥のお嬢様だった」 少しだけ懐かしそうな声音で微笑して、 エレベーターの矢印を押した。 「真顔で、恋を語る人だったよ」 専務と同じように、だろうか。
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