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――ズグンッッッ!!!
心臓が。
殴られたように、飛び跳ねた。
――見て見ぬフリをしないだけ――
なんで。
そんなことが……言えるんだ?
「他に欲しいものは、なかったから」
さらりと答えて、
専務はエレベーターに乗り込んだ。
「だから、努力することにした。
――それだけだ」
息をすることがギリギリで、
降りる階の数字を押すことすら、
手が震えて難しい。
どうにかボタンは押したものの、
開閉ボタンには横から手が伸びた。
ポーン。
押した階へは、
呼吸が整う前に着いてしまう。
智樹の背中を押しながら、
専務はあくまでも冷静に呟いた。
「僕個人としては、棘を抜かれた君に、親近感が湧く。
上司としては、今の君は人間らしくて信頼がおける。
……以上だ。
分かったら、早く迎えに行ってくれ。
鞠弥が戻って来ないから」
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