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「失礼します」
エレベーターを待てず、
階段を駆け下りて荒れた息を整えた。
「来たか」
「あ、ノンちゃん。
三上さん、来てくれたって」
長身痩躯の専務と、小柄な専務夫人。
その奥に、俯いた少女が座っている。
「ノン」
声をかければ顔を上げるが、
真っ赤な目が合うと、
すぐにまた俯いてしまう。
雨に濡れた華奢な肩が、
小さく震えているように見えた。
「何が、あったんだ?」
「傘を届けに来たんだそうです」
「来たは良いものの、どうしたらいいか分からなくてオロオロしていた。
そこを警備員に見咎められたようだ」
「そうだったんですか……」
「警備員には注意をして戻らせた。
対応が悪くて、すまない」
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