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首を振って、泣き崩れるノン。
怖かったのでなければ、
何故泣いてるか、訳が分からない。
「……あのぅ」
首だけ振り向けば、
声をかけてきたのは専務夫人だった。
「何でしょうか」
「たぶん、ですけど。ノンちゃんは、
三上さんに迷惑かけたことを、
謝ってるんだと思います」
「は? 迷惑?」
「会社で騒ぎを起こしちゃったこと。
仕事中に呼び出しちゃったこと。
そういうことじゃないかと」
専務夫人が背後から囁いてくる。
それが聞こえているのかいないのか、
ノンはただ身を堅くして泣いていた。
「……ノン? 俺は怒ってないよ。
傘、持ってきてくれたんだろ?
ありがと、な」
ぎゅっと抱き締め、髪を撫でて囁いた。
「怒って……ない?」
「怒ってない。分かるだろ、見れば」
「……嫌いに……なら、ない?」
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