第1章

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【貴方の超能力は二つ、一つは視覚と聴覚を共有する分身を作り出す事で間違いありませんね】。 『はい、間違いありません』。 そう答えると、僕は僕と完全に同じ姿の分身を出現させた。 【ふむ、貴方の脳の一部の間借りしている身としては。同時に二つの視覚情報が脳に入ってくるのは奇妙な感覚ですね】。 『僕は作られた時からそうでしたから、違和感を感じた事はありません』。 【成る程、製造時からそれが当たり前なら、確かに違和感は感じませんね。その分身は貴方と視覚と聴覚を共有しながら、貴方が自由に動かす事が出来るのですね?】。 『はい、その通りです』。 【そしてその分身は、視覚と聴覚を共有しているだけで実際に物質的に存在している訳ではありませんから、壁などの物理的な障壁を通り抜ける事が可能なのですね?】。 『はい、その通りです』。 【では壁を通り抜けて隣の実験室の様子を確認して頂けますか。誰も居ないように予定は変更してありますが、念の為です】。 『はい、分かりました』。 僕は分身を操作して壁を通り抜けて隣の実験室に分身を移動させた。 【……確かに誰も居ませんね。照明は付いていますから実験室の中を確認するには問題無いですね。分身の視線を動かしてもらえますか】。 『はい、分かりました』。 僕は隣の実験室の分身の視線を動かして、実験室の中の様子を確認した。 【これは便利ですね。物理的な制約を一切受けずに、視覚情報と聴覚情報を共有する分身を送り込めるのですから】。 『そうなんですか?。先程も言いましたが、作られた時からこれが当たり前でしたから、特に便利とか考えた事はありません』。 【まあ製造時からの能力なら、当然かも知れませんね】。 『それで次はどうすればいいのですか?』。 【はい、本来の予定なら貴方と同型のクローンが此方の実験室で廃棄処分になる予定でした。廃棄処分予定のクローンは実験室中央の処置台に置かれて、後三十分したら職員が来て廃棄処分されたクローンを死体置き場に移送する事になっています】。 僕は分身の視線を動かして、実験室の中央にある処置台を確認して。 『いつも僕が処置を受けていた、この実験室と同じ作りですね』。 【はい、この実験施設は基本的に同じ構造の部屋で構成されています】。
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