第1章

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雷鳴がとどろく。 雨が鳴る。 (早く帰らなければ) さおりは突然の雷雨に顔をしかめ、早くもずぶ濡れになりながら走り出そうとした瞬間。 右の植え込みから何か茶色いものが飛び出てきた。 それは、小さな小さな仔猫だった。 同じくずぶ濡れだ。 「……………!!」 仔猫はさおりを見上げながら痩せ細った小さな体を必死に支え、出ない声で懸命に鳴いていた。 (救いを求めている) さおりは瞬時に察し、そのずぶ濡れの小さな茶色のかたまりを抱えあげ抱き締め走り出し、タクシーを拾った。 「濡れていてすみません。」 恐縮して運転手に謝る。 「いえ。突然ですものね。大丈夫ですか?もうすぐ秋がくるしるしですよ」 運よく拾えたタクシーの運転手が親切な人で良かったと思いながら、さおりは近くの動物病院へ行ってくれるように頼んだ。
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