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「おかえり、
拓海くん。
浴衣って右前? 左前?」
「……貸して」
帰って早々、
言いたいことは山ほどあったんだけど、
その慌て様に、
胸がキュンとする。
「俺がベランダから一緒に花火見ようねって、
言ったから用意しようとしてたの?」
「あ、
ああ。
せめて浴衣ぐらい着てから出迎えたかったんだけど」
申し訳なさそうに笑う、
麗也さんが愛しい。
「ベランダで待ってて。
すぐ行くから」
「あ、
ああ」
ちょっとだけ不安そうに此方を見ながら、
ベランダの椅子に深く座る。
ちらちらと俺を見るのが堪らなく可愛い。
オールバックの髪に、
ちょっと大きめの浴衣。
わざと緩めて着せた。
鼻梁に切れ長のちゃっとつりあがった目は冷たく、
凍りつきそうなほど綺麗。
それに、
雰囲気からして艶がある。
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