番外編。白夜の下、蕩ける愛を。

3/29
前へ
/30ページ
次へ
「おかえり、 拓海くん。 浴衣って右前? 左前?」 「……貸して」 帰って早々、 言いたいことは山ほどあったんだけど、 その慌て様に、 胸がキュンとする。 「俺がベランダから一緒に花火見ようねって、 言ったから用意しようとしてたの?」 「あ、 ああ。 せめて浴衣ぐらい着てから出迎えたかったんだけど」 申し訳なさそうに笑う、 麗也さんが愛しい。 「ベランダで待ってて。 すぐ行くから」 「あ、 ああ」 ちょっとだけ不安そうに此方を見ながら、 ベランダの椅子に深く座る。 ちらちらと俺を見るのが堪らなく可愛い。 オールバックの髪に、 ちょっと大きめの浴衣。 わざと緩めて着せた。 鼻梁に切れ長のちゃっとつりあがった目は冷たく、 凍りつきそうなほど綺麗。 それに、 雰囲気からして艶がある。
/30ページ

最初のコメントを投稿しよう!

207人が本棚に入れています
本棚に追加