トラックの次期エース

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練習?もちろんしっかりやってるつもりだ。 記録を出した大会以降は練習量も倍近くやってるし、周りだって協力的にいろいろサポートしてくれている。 コーチも陸上部のみんなも、もちろん紗枝も応援してくれている。 紗枝とは高校時代からの付き合いだ。 おれが陸上と掛け持ちでやっていた軽音で組んだバンドのボーカルだった。 紗枝は最初ドラムの啓祐狙いだったみたいだが、曲の趣味や笑いのツボ、それにグルメとは言えないが食に対する嗜好が似ていたため、自然に2人が一緒の時間が多くなり付き合うようになった。 卒業して別々の大学に入って会える機会が減り、それこそ去年の11月の大会の後は会える機会もさらに少なくなったが、それまでと同じように付き合ってくれている。 正直、今年に入ってタイムが伸び悩んでいて、合えば愚痴ばかりのおれを叱咤激励してくれ、ときには安らぎを与えてくれている。 「護。明日からスタート練習、重点的にやろうか。 今日はもう上がっていいぞ。」 コーチに言わせるとおれは基本的に残り100mの逃げが持ち味で、勝つだけなら今までの練習の延長でいいが、さらに上を目指すならスタートから50mでペースを作れという。実際スタートが苦手なのは自分が一番分かっている。 「はい。 速水さん、でもあと5本、やってから上がります。」 でも… どれだけがんばりゃいい 頭ではわかっているのに 決意が鈍りそうになる。
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