40人が本棚に入れています
本棚に追加
2014年春―――
「父さん、平和学習の宿題があるんだけど、ちょっといい?」
日曜の朝、小学6年になった息子の郁が、テレビを見ている俺の横にノートを手に座った。
「今度修学旅行から帰ったら発表なんだよ」
「へえ~…それで?」
「身近な人の戦争体験や空襲の話とか。身近な人って言われてもさあ…」
「そうだな……よしっ、ちょっと出掛けるか」
俺は『どこに?』と首を傾げている郁を『いいから…』と理由も言わず連れ出した。
家から3分程歩いた先に、我が家の墓地がある。
墓地と言っても荒らしていた畑に、父が飛び地のようにあった墓を一ヶ所に集めたのだ。
父はこの墓の整理を『自分が元気なうちにやりたい』と長年こだわっており、やっと数年前にやり遂げた。
最初のコメントを投稿しよう!