40人が本棚に入れています
本棚に追加
祖父が倒れて何年か経ったある日曜日―――
俺は祖父に会いに行くと言う母親について行くことになった。
まともに顔を合わせるのはいつ以来だろうか…
そんなことを考えながら、皆が集まるフロアにやって来た。
祖父は……
俺たちの顔を見つけると、見たことのないような表情になった。
(この人が…じいちゃんなのか?)
穏やかに微笑む、好好爺そのままの老人は、やはり何度見ても自分の祖父だ。
だが、俺が知っている祖父は、厳しく口煩い存在で、こんな顔をしていた覚えがない。
「来てくれたのか…」
弱々しくはあるが、それでも声は祖父の声…。
「よく…来てくれたな…」
「あ…ああ。母さんが『行こう』って…言ったから……うん」
嬉しそうな祖父に、返す言葉は愛想がなく、粋な返答ではない。
「……さん家の息子さんが…」
母は慣れているのか驚いた顔もせず、祖父の知りうる範囲の近況を話す。
「そうか…そうか…」
そんな話に頷きながら祖父は母に返答している。
(しっかし、本当にお年寄りばっかだな…)
そう思いながら回りを見回してる時だ。
最初のコメントを投稿しよう!