第1章

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 カズマ(大人)は消えた。彼の望んだミワの元に帰っていったのだ。目の前にあるダーンカイザーにももうその意思はない。  それはつまり、カズマにはもうヒーローを目指す理由が無くなったということだった。 「俺は何をすればいいんだ。この世界でたった一人で・・・」 「僕が教えてあげるよ!」  格納庫の天井が吹き飛んだ。タクトのアーノルドが見下ろしてきた。その腕にはヒエバナの機体が握られている。  外の戦いをクローンに任せ、タクトは話し掛けてくる。 「君は今までのように僕のために破壊をしてくれればいい。僕ではやっぱり上手く出来なくてさ。こんな物でもなかなか上手く壊れてくれないんだ」 「ううっ、カズマさん・・・」 「今までのように破壊と再生を上手く分担していこうよ。二人で世界を動かすんだ。いらない奴らを全部破壊してさ!」 「あああ!」  タクト機の力が強められ、その腕の中でヒエバナが悲鳴を上げた。  その光景はカズマにA級怪獣に握りつぶされそうになった最初の戦いを思い出させた。  敵の腕を払いのけ、デッドエンドスパークスを決め、勝利した。みんなが喜び、ヒーローインタビューを受けた。ミワも喜んでくれた。でも、それも全部・・・ 「俺の記憶じゃないんだ・・・!!」  カズマは失意の中にありながらもダーンカイザーに乗り込んだ。タクトは喜びの声を上げた。 「やる気になってくれたんだね、カズマ! いつものようにいらない奴らを綺麗に破壊してよ! 僕には君だけが必要なんだ!」  カズマは動く。ダーンカイザーの剣がヒエバナを掴んでいたタクト機の腕を斬り落とした。タクトは驚愕の声を上げた。 「何をするんだ! カズマ!」 「違うぜ、タクト。この世界に人は必要なんだ。俺とお前だけが必要ないんだ!」 「お前も壊れてしまったのか! カズマああああ!!」  飛び立つタクト機。 「行ってくるよ、ヒエバナさん」    後を追ってカズマも飛んだ。空中で静止するタクト機。その壊れた腕が再生し、周囲のクローンアーノルドと合体して巨大化していく。 「僕は今こそ理解したよ。この世界に怪獣が必要だったわけを!」 「怪獣か。それももう過去のことだ。今の時代にはもうほとんど残っていない」 「僕が始めるのさ! その歴史を!」  タクトは巨大なSS級怪獣となって変貌した。その姿はカズマにかつての記憶を思い出させた。
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