嬢王様の誕生

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「で、あんたの名前は?」 どんな名前でもまったく興味ないけれど。 「俺?」 「アンタしかいないでしょ」 「はは、確かに。 俺は……タゴサクだよ」 「は?タゴサク?」 なんてふてぇヤロウだ。 せっかく人が名前を聞いてあげたのに、偽名を使うなんて。 しかもタゴサクという、バレバレな偽名感。 私はバカにされているのだろうか? 「ちっ」 思わず舌打ちがもれた。 「ちょ、そんなにイライラしないでよー。 偽名だと思ったでしょ? でも違うんだよ、俺、本当にタゴサクって名前なんだよー。ほらっ」 そう言って目の前の男はスーツの内ポケットから一枚の名刺を取り出す。 「club Cristal 佐々木……田吾作?」 名刺には確かにそう書かれていた。 「ね?本当でしょ?」 「うーん」 私は渡された名刺をまじまじと見る。 club Cristal? 「これ、ホストクラブの名前? 思いっきり源氏名じゃない」 嘘くさい名刺を使って、偽名を本名だと言い張る目の前の男。 変なヤツ。でも面白い。 ほんの少しだけ興味がわいた。 といっても、ホストクラブには行かないけど。
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