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「え!?な、なに!?」
私が突然止まり、振り向いた事で、あからさまに驚く男。
待てって言ったから待ったんじゃないの。何驚いてんの。
「何の用か知らないけどさ。
私、今、お腹減ってるの。
おごりでどこか美味しい店連れてってよ」
「え?」
「ナンパだかなんだかしらないけど、何かおごれって言ってるの」
その言葉に男はぽかんと口をあけていた。
なんでそんな顔をするのか。
そもそも、赤の他人の言葉にタダで足を止めてやる義理はない。
ボランティア精神は私には備わっていない。
別におごれないならそれでいい。ここでバイバイして私はまた店を探すだけなんだから。
そんなことを思っていると、フ抜けた顔をしていた男が口を開いた。
「ははっ。面白い女だな。
いいよ、好きなだけおごるし、すごく美味しい店紹介するよ」
その顔は満面の笑みに変わっていた。
いい顔するじゃん。
「そ、ありがと」
交渉成立。
私はご飯をおごってもらう。変わりに少し話を聞いてあげる。
ナンパなのか、ホストクラブの勧誘なのかわからないけれど。
とにかく、これで私の胃が美味い物で満たされることが確定したのだ。
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