嬢王様の誕生

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「何で声かけたのかって? ナンパ、かな。 すっごい美人が歩いてるから思わず」 「ふーん。ナンパ、ねぇ。あ、ビールも追加注文よろしく」 今までナンパなんて数え切れないくらい経験している。 しかし、なんとなくだけど、この男からナンパな感じがしない。 経験上、体感的にしっくりこないのだ。 なんだろう、このモヤモヤとした違和感は。 そうは思ったけれど、本人がナンパだと言ってるのだからそれ以上聞く意味はなさそうだった。 「じゃ、俺はウーロン茶」 「お酒飲めないの?」 「いや、これから仕事でさ。飲みたいのは山々なんだけどね」 夕暮れ時にスーツ姿でこれから仕事。やっぱホストかな。 心にモヤモヤした感じは残ったままだけれど、よく考えればこの男が何者であろうと私には関係なかった。 飯をおごってくれる。 ただそれだけなのだから、コイツのことを知る必要も無い。 私は深く考えるのをやめた。
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